ミノリの盤上遊戯録

ボードゲームあそびます。

【パッチワーク】パッチワーク勝率80%へのアプローチ

ウヴェ・ローゼンベルク『パッチワーク』完全攻略本

Author: ミノリ(blazestar)

内容

1 総論... 2

(1)本論の構成・著者について... 2

・本論の構成および記法... 2

・著者について... 2

(2)パッチワークというゲームの本質的要素・副次的要素... 2

(3)タイルの価値とは何か?... 3

2 タイル理論... 4

(1)強いタイルとは?... 4

タイルの本来的価値... 4

VBの限界... 4

(2)ボーナスタイルの価値... 4

・7x7ボーナスタイル... 4

・スペシャルパッチ... 5

(3)プレイヤーボードの埋め方... 5

・平面積みと隅積みの優劣... 5

・1マス妥協はOK... 6

・端妥協はOK、中央妥協はNG... 6

・強タイルの受けを意識する... 6

・受けの広い空間を維持する... 6

(4)強いタイルまとめ... 7

3 敵対的購入論... 8

(1)4タイル待ち... 8

(2)ツーク・ツワンクと壁... 8

(3)ボタンを絞る... 9

(4)打開義務... 9

おわりに... 10

APPENDIX:ミノリのタイル評価表... 10

 

 

1 総論

  • 本論の構成・著者について

・本論の構成および記法

 本論は、パッチワークのエキスパートである著者が、勝利のための理論を可能な限り言語化することを試みた文章です。ぶっちゃけ著者が寝ていても脳内でパッチワークし始める状況から脱却するため書いた卒業論文です。

 

第一部では、パッチワークのゲームの本質的な要素と、タイルの価値について記述します。

第二部では、相手の存在を考慮しない自分ボードの最適な埋め方を記述します。

第三部では、敵対的な相手の存在を踏まえた打ち手の最適化のための手筋を記述します。

 

また、以下パッチワーク中に登場するパッチタイル(タイル)については、プレイを簡略化するため、「ボタンコストー時間コスト」の形で表記し、同値のものがある場合は形状を指摘します。(例:0-3、1―2凹型、10-5)

ボタンとは一般に金銭としてのボタンを表し、タイルについたボタンは別途「収入ボタン」と定義します。

 

・著者について

ミノリ(BGAプレイヤーネーム:blazestar)

BGA『パッチワーク』エキスパート。

シンプルゲーム勝率約77%(293-228)。(執筆時世界ランク70位)

※2023年現在勝率80%を達成。

アリーナ戦シーズン14エリート帯(最高位)。

 

  • パッチワークというゲームの本質的要素・副次的要素

 まず確実に断言しておかねばならないこととして、パッチワークはパズルゲームではありません。好きなタイルを取るお絵描きゲームではありませんし、盤面を埋めきったら勝つゲームでもありません。パッチワークというゲームを一言で表すと、「時間・ボタン・盤面の制約の許す限り強いタイルを選んで買いながら、相手に自分より弱い手を打たせ続けるゲーム」です。そして、「ゲーム終了時に相手より1点以上多く取ること」を目標とするゲームであることを忘れてはいけません。パッチワークの本質とは選択の差を作り得点差を作ることです。ほのぼのとしたテーマですが、内容は相手を弱らせ叩き潰す残忍さが必要になります(※個人の意見です)。

 それでは、パッチワークにおける得点とは何か。本質的には、ボタンとタイルのマス目です。

ボタンは、終了時に1ボタン=1点になりますから、ゲームにおける1単位の価値として機能します。(つまり、すべてをボタン基準で換算して考えてよいということです)。

タイルのマス目は得点ではありません。しかし、プレイヤーボードの空きマスは、1マス=2点の減点となります。パッチワークとは、-157点から始まるゲームと考えることができます。すなわち、パッチワークにおけるタイルの価値は、1マス=2点です。

 時間は資源ですが、ボタンではありません。時間はパッチワークにおける副次的要素でしかありません。しかし、パスをすることで1時間=1ボタンの価値が得られるため、価値としては1時間=1点と疑似的に考えることができます。

 プレイヤーボード(9x9)も、外在的な制約で、かつ得点に寄与しません。これもゲームも副次的要素にすぎません。ですから、わたしはパッチワークがパズルゲームではないと申し上げているのであります。

 

(3)タイルの価値とは何か?

 BGAで「パッチワークってどうすれば勝てるんだ(スペイン語)」と初心者のブラジル人兄貴から聞かれたことがあります。わたしは「相手より高い価値のタイルを取り続けること」と答えました。そのときの質問がこれです。

 ブラジル人兄貴「じゃあ強いタイルってどれなんだ?」

なるほど。確かにどのタイルが強いのか、価値が高いタイルがわからなければ勝てるものも勝てません。実は、パッチワークのタイルは意図して強弱がデザインされています。タイルには絶対的な強さの強弱があります。それは強いタイルを覚えていれば済むことです。しかし、その強さはタイルの並びという要素によって変化します。価値の高いタイルとは、要約すると「消費するボタンに対してマス目が広いか、もらえるボタンが多い」タイルのことです。これについては第二部で、並びを踏まえたタイルの強弱は第三部で論じましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 タイル理論

  • 強いタイルとは?

タイルの本来的価値

 先ほど、価値の高いタイルとは、要約すると「消費するボタンに対してマス目が広いか、もらえるボタンが多い」タイルのことである、と説明しました。それでは、なぜこのようなタイルは、価値が高いのでしょうか。それは、このような強いタイルは、ボタンとしてのタイルの価値(VB, tile Value as Buttonと定義しましょう)を計算したときに、その値が大きくなるからです。総論で申し上げたボタンとマス目の価値論から、あるタイルの価値を計算しようとすると、以下の計算式が導かれます。

 

VBの計算式)

 

VB=2(タイルの大きさ)+(ボタン数)*(未通過の決算ボタンの数)―(購入ボタン代)

※補足:未通過の決算ボタンとは、時間ボード上の決算時点を指します。

 

 

この式の優秀な点は、「序盤は安くてボタンが多いタイルが強く、終盤はボタンが少なくても広くて安いタイルが強い」というゲーム内感覚と一致した価値判断が可能だというところにあります。時間がある最初と、最後の1手については、VBを用いることによって適切なタイル価値の計算が可能です。

 

VBの限界

とはいえ、VBの式を見ればわかる通り、この式自体は時間コストを一切考慮していません(時間経過によるボタン付タイルの価値変化は踏まえていますが)。そして、相手が取得するタイルについても一切考慮することができません。そのため、それらを補うため、敵対的購入理論を持ち出します。これは、第三部に記述します。

 

  • ボーナスタイルの価値

・7x7ボーナスタイル

パッチワークにおける強いプレイヤーの特徴として、高い確率で7点ボーナスタイルを取得していることが挙げられます。実際、BGAの全プレイヤーのボーナス取得率が35%、勝者平均で68%と、きわめて大きな差があります。(ミノリのボーナス取得率は60%台前半程度です)。7点ボーナスタイルは、単純に手数をかけずに7点というだけでなく、奪い合いになったときには実質14点分の利益と、無視できないレベルでの点差が発生します。ミスプレイをしてくれない強豪同士の対戦においては、ボーナスの先取りは勝敗をひっくり返しかねない要素です。はっきり申し上げますと、7x7を狙うことによる打ち手効率の低下や形の悪化よりも、ボーナス獲得の利益の方が大きいです。パッチワークでは、常に7x7を相手より先に埋めることを意識しましょう。

スペシャルパッチ

先ほどボーナスタイルの重要性を主張しました。続いて1マスのスペシャルパッチについてですが、わたしはこのタイルをあまり重要ととらえていません。取れるなら取ればよい、程度のものであると考えています。その理由として、

・1マス2点なので、打ち手による利益の方が大きい。

・相手に4マス取られても差し引き6点差にすぎず、7x7ボーナスの7点の方が大きい。

・そして血眼になって追わなくても、1、2枚くらいは勝手に手に入る。

・終盤に残り数マスになった場合、受けられるタイルが減りかえって邪魔なケースがある。

ことがあげられます。とはいえ、やはり手数をかけずに取ることができる2点利益であることには変わりはないので、自然に狙える範囲での取得を目指しましょう。

 

  • プレイヤーボードの埋め方

・平面積みと隅積みの優劣

パッチワークには1辺からすべての列を詰める「平面積み」と、1隅から両辺に向かって7マスまでタイルを詰める「隅積み」の2つの方法があります(命名は筆者)。中央から埋める人もいますが、中央から詰めるプレイヤーで強いプレイヤーを見たことがありません(受けられるタイルの種類が減るので、個人的にも非推奨です。例外として、隅積みや平面積みの手順前後として辺や隅にくっつけずに配置することはありますが)

 隅積みは7x7ボーナスの取得が狙いやすいうえ、十字型やH字型のような立体的なタイルを綺麗に受けることに優れます。隅積みが基本でよいと思いますが、強いタイルで埋めていくにはやや練習が必要です。また、細長いタイルの生成が偏った場合、終盤の打ち手がなくなることがあります。

 平面積みは1-2、7-2などの細長いタイルを受けやすく、かつ形状が安定していることからタイルを広く受けることに優れます。しかし、隅積みに比べ7x7の取得が遅れがちになり、終盤は立体的なタイルを受けることがかなり難しくなります。

 始動の第一タイルは、隅に隙間なく置けるかでどう積むかを決めます。たとえば、5-4や5-5といったタイルは、隅に配置すると受け(=詰められるタイルの種類の多さ)が限られるため、辺から配置を始めます。(これらは10個先程度までタイルを見て何を受けるか判断します)。0-3や1-4といった十字型タイルは、埋めやすい空間を確保するため、あえて中央に伸ばす方向に置きます。隅積みと平面積みは背反というわけではなく、辺から配置を始めても隅積みに移行することはあります。

 

・1マス妥協はOK

1マスの隙間を空けてタイルを配置することを「1マス妥協」(命名は筆者)と呼びます。そして、パッチワークにおいて妥協は重要なテクニックです。2、3回であれば、1マス妥協が必要ならどんどん打ちましょう。その理由として、

・効率を下げてマス目を埋めきるよりも数マス残しても高い効率で打った方が高得点。

・ほぼすべてのゲームで時間が足りないのでだいたい5、6個マス目が余る。

・そのため、ある程度妥協をしてもボードには余裕が残る。

・ゲームに慣れてくると受けを用意するためそもそも妥協の必要が減っていく。

・むしろ、終盤のスペシャルパッチを安全に入れるためのスペースが必要。

という理由があります。ボードを埋めきる試合は100戦に1,2回あるのですが、せいぜい30点がいいところで、5、6マス残したときの方が点数が良いことがほとんどです。パッチワークはマス目埋めゲームではなく、高い効率でタイルを取るゲームだということがわかります。まあ、気持ちいいのはわかりますけど。

 

・端妥協はOK、中央妥協はNG

 そんな妥協ですが、していい場所としてはいけない場所があります。してはいけない場所、それはボード中央の5x5のエリアです。なぜなら、ここに空きマスが発生すると、7x7ボーナスが取れないからです。つまり、相手にスペシャルパッチを絞られると、ボーナス点が阻止されてしまううえ、相手はゲームの最後までボーナスの回収を遅らせることができます。これは致命的です。そのため、妥協するなら端、それも辺に面した1マスか、隅1マスで妥協しましょう。端妥協はそれほど痛くありません。隅積みが強い理由は端妥協の容易さにもあります。

 

・強タイルの受けを意識する

 このゲームにおいて強いタイルは基本的にいびつな形にデザインされています。そのため、効率よく強いタイルを回収して隙間なく配置するためにはある程度の準備、「受け」の形を作っておく必要があります。これは強いタイルによって盤面が圧迫されることを避けるためです。主に、十字型や凹型と直線部分を組み合わせて用意することが多いです。強いタイルの詳細については、(4)にて話します。

 

・受けの広い空間を維持する

 このゲームにおいて、どんなに価値が低かろうがタイルを取ることはプラスの得点行動です。しかし、盤面には9x9という制約があるためだんだん配置が苦しくなってきます。そこで意識したいのが「受けの広さ」です。たとえば5マスの空きマスがあるとして、それが直線の形に並んでいると、受けられるタイルは2-1、3-3、7-1の4種類しかありません。しかし、3マス+2マスの形であれば、2-1、2-2(3種類)、4-2、4-6、6-5の7種類を回収することができます。つまり、この形は「より広い受け」であるといえます。そのため、タイルを配置するときはできる限り開けた空間を残すように配置しましょう。序盤の1-4などの大きいタイルが辺で受けにくい場合は無理におかず、中央に伸ばすように配置すれば、苦しい形になることを減らすことができます。

 

 

  • 強いタイルまとめ

 ミノリが強いと評価しているタイルは以下の通りです。付録に全タイルの主観的評価を載せています。

 

0-3、1-2(凹)、1―2(Z)、1-4、2-1(大)、2-3(H)、5―3、5-4、

7-2

 

とはいえ、これしか取らないのではなく、そこそこの強さのタイルで盤面を整える、相手に弱いタイルを押し付けるため強いタイルをあえて取らないケースはたくさんあります(1枚では弱いタイルでも、連続取得によって疑似的により強いタイルになることがあるからです)。ここでは相手に依存せず強いタイルのことを記します。

 特に強いのは0-3、1―4の2枚であり、この2枚は収入ボタン1枚あたりのコストが0枚、1枚という破格の効率だけでなく、価格も安価で埋まるマス目も大きい、最強のタイルです。基本的に、ポーン駒一巡目で両方を回収することを狙いますし、このタイルを受けるため十字型の空洞(受け)を用意します。それほど重要なタイルです。十字型の空洞はほかに5-3、5-4の受けにもなります。

 5-3、5-4も強いタイルです。序盤は5―4、後半は5-3が強タイルになります。5-4も収入ボタンあたり2・5ボタンと効率が比較的良く、0-3、1-4と受けの形が共通しており、かつ自身も2-3受けを持ちます。5―3も一手で8マス(16点)を取れるタイルであり、高値ではありますが他のタイル2個ほどのバリューがあり、取りたいタイルです。

 1-2、2-1、2-3は安くて場を埋められるタイルです。収入ボタンがないためスルーしがちですが、ボタンを残しながら場を埋められるこれらのタイルは貴重です。形状がいびつなので、これらも受けを意識して拾いましょう。

 7-2は2ボタンを2時間で回収できる、しかも6マスと大きいタイルです。中盤の収入稼ぎや時間調整において真価を発揮します。平面積みであればかなり受けやすいことも強さの理由です。

 

 

 

3 敵対的購入論

 敵対的購入論とは『パッチワーク』において相手を搾取するための戦術です。つまり、「自分が損しても、相手がより損をすれば、それは自分の利得である」という二人ゼロ和有限(確定)完全情報ゲームの性質から生まれる、相手の存在を前提にした最善手の模索であり、ただのタイルの価値を反映したものにすぎないVBを補完するために用います。

 

(1)4タイル待ち

・4タイル先は取れる

パッチワークは3タイル先までを取ることができるゲームです。パッチを取ることによって手番が交代する場合、欲しいタイルの4タイル前のタイルを取っておけば、次に相手がどのタイルを取ったとしても、目的のタイルを取ることができます。「4タイル先は確定待ち」という原則は、もっとも重要なテクニックです。強いタイルが4つ飛びに並んでいる場合は特に重要であり、4タイル待ちを成立させることが大きな得点差になります。

 

・4タイル待ちが成立しない場合の待ち

 もっとも、4タイル先を待っていたとしても、連続手番によるタイル取得が可能な場合は、4タイル待ちが成立しないことがあります。最もありうるのは1時間タイルがある場合で、この場合は常に4タイル待ちが成立しません。このような場合は、そのタイルのさらに4個前で待ちが成立します。彼我の時間差、タイルの並びにより確定待ちができる場所は変化しますので、注意深く観察しましょう。また、1時間タイル(2-1、3-1、7-1)は常に連続取得が可能なためそれだけで特別な価値を持ちます。

 

(2)ツーク・ツワンクと壁

 チェスにおいて、相手にある動きを強制させるための動きのことをツーク・ツワンクといいます。そして、パッチワークにおいても、相手に打ち手の自由度を与えないことは極めて重要になってきます。なぜなら、「打ち手の選択肢が多い方が、より高い価値のタイルを選択することができ、相手に低い価値のタイルを押し付けることを選択することが容易である」という一般的仮説があるからです。

 最も理解が容易な例は、相手の手持ちが0ボタンである場合です。(0ボタンで購入できるタイルは0-3しかないため、)相手は次の手番でタイルを取ることができず、必ずパスをすることになります。これは最も自由度がない例です。このような場合は、こちら側は3-6や1-5のように、時間的コストが高いが強いタイルを安全に確保することができます。つまり、相手に自由度を与えなければ、時間的コストは疑似的に無視することが可能です。時間を無視できる状況ではタイルの本来のバリュー(VB)を実現することができます。

 パスを強いるだけではありません。例えば、値段が高いタイルに2-2(3マス)などの価値が低い弱いタイルが挟まっていて、その先に強いタイルがあるような場合でも、相手のボタンが少なければ、その弱いタイルを取ることを半ば強制(もしくは強いタイルの取得を抑止)させることができます。これをわたしは「壁」として概念化しています。「壁」とは購入不可タイル3つまたは強いタイルの前に弱いタイルが3つ並んだ状態のことです。このような壁の目前にとどまることは相手に損な打ち手を強制させることができるため、できるだけ相手に壁を押し付け、自由な手を打たせないことが、パッチワークにおける重要な戦術となります。

 

(3)ボタンを絞る

 わたしが意識し始めてから、勝率が劇的に改善した戦術です。ボタンを絞るとは、「初動に相手に収入ボタン付きの強いタイルを回さず、収入差をつけてボタンの物量で圧殺する」という戦法です。要は先行制圧です。初期配置において安い収入ボタン付きのタイルが潤沢でない場合に使います(つまり運要素が絡みます)。なぜこの戦法が強いのか。それは最も序盤の収入ボタンの差は、目視できるより大きな差を生んでいるからです。決算はトータルで7回ありますから、最初の決算の1収入ボタンの差は、実質的に7点差を生んでいるというわけです。何もせず、ボーナスタイルと同じ点差が発生しています。また、初動の収入の遅れは低収入を生み、高額タイルの安定購入の遅れに直結するため、相手に利益を搾取される動きをされやすくなります。タイルの評価において、いくつかのタイルを序盤に優秀と評価しているのはこのためです。パッチワークの終盤は買えるタイルが増えるので、逆転要素のように見えますが逆です。パッチワークは序盤こそ最大の勝負所です。

 

(4)打開義務

 先ほど「壁」の理論を説明しましたが、相手が「壁」の前に直面したとき、①弱いタイルを仕方なく取るか、②パスし続けて相手がタイルを取るのを待つ、という選択肢があります。①の場合は問題ありませんが、②を選択された場合、こちらも損をしたくないのでパスを続けることになります。その膠着状態が続けば、いずれゲームは終わるのですが、そのとき、どちらが勝つのかという条件が問題になります。パスをし続けて負ける側が「壁」を超えるという不利益を受け入れなければなりません。これを「打開義務」とよびます。打開義務とは、お互いにパスを選択し続けたときに負けるプレイヤーが負うタイルを取る義務のことです。パッチワークにおいてパスを続けた場合、片方のプレイヤーが1マスのスペシャルパッチを独占します(=10点差がつく)ので、おおよそパスによりスペシャルパッチを取得する方にはまず打開義務がありません。打開義務は、収入ボタンの数の差、埋まったマス目の数、ラストターンに取れるタイルという確定情報により公開情報として判明します。基本的に不利な側が打開義務を負うので、打開義務を負わされることによるディスアドバンテージによりさらに不利になります。このゲームが先行制圧ゲーと述べた理由の一つです。

 ちなみに、ゲーム開始時点においては先手が打開義務を負います。なので、このゲームは後手が有利です。(最も、初期配置の要素が大きいので、確実ではありません。)

おわりに

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この内容はブログ「ミノリの盤上遊技録」にて同様の内容が無料で公開されているため、複製、頒布等は自由に行っていただいてかまいません。また、無償かつクレジットを継承したうえでの加筆修正、公開を認めます。

 

このゲームは突き詰めるとこまでやると実力3:運7だと思っています。どんなに頑張っても序盤の配置で負けるときは負けます。しかし配置運だけに頼っているわけにはいきません。これらのテクニックを生かせば、少しでも有利に試合を進められることを願っています。わたしの勝率もそのことを証明できていると信じています。わたしもここまで楽しめるゲームだと思っていませんでした。

 

 ローゼンベルクの傑作『パッチワーク』、ぜひ楽しんでいただけると幸いです。

2022/9/13 著者 ミノリ

 

APPENDIX:ミノリのタイル評価表

☆の数が多いほど、強いタイルであることを示します。

(0ボタン)

0-3:☆5。絶対に取るべきタイル。12点+1収入ボタンを0ボタンでとれる。最強。

(1ボタン)

1-2(凹):☆5。9点でコストも優秀。ボタンが貴重な序盤ですら取ることを考慮する。

1-2(Z字):☆5。平面積みをするとき優秀。上記とほぼ同じ理由。

1-3:☆2。1ボタンでとれることは評価点だが基本不要。

1-4:☆5。0-3に次ぐ優秀タイル。形が大きいので、受けられる形を作っておくこと。

1-5:☆4。時間コストの重さを度外視すればかなり高効率。序盤でとれば優秀。

(2ボタン)

2-1(2マス):☆3。1時間を利用したタイル間の繋ぎや盤面を妥協するのに使う。

2-1(6マス):☆5。無収入タイルでもかなり高効率。拾いたいタイルの一つ。

2-2(3マス):☆1。上位互換が存在するため単独で取る価値はない。

2-2(T字);☆2。進んで取る価値はないが形状が便利。

2-2(5マス):☆4。安価、そこそこ大きい、形が楽なのでよく回収する。

2-3(Z字):☆4。収入ボタンあたりとしてはかなり安いため、時間が許せば回収する。

2-3(H字):☆5。2-1には劣るが12点は大きい。ぜひ回収したいタイル。

(3ボタン)

3-1:☆3。ほぼ扱いは2-1。

3-2:☆4。爆発力はないが、隙が少ない、いつでも拾いたいタイル。

3―3:☆2。7-1や10―3の方が便利なので、資金を抑える妥協案として使う。

3-4:☆3。安価で形状もよいが4時間が重い。好き好んで回収する必要はない。

3-6:☆3(序盤は☆5)。序盤で取れるなら最強。SPパッチ回収にも使える。

(4ボタン)

4-2(L字ボタン):☆4。3-2と扱いはほぼ同じ。

4-2(平行四辺形):☆4。価値的には2―2と同じなので、同様。

4-6:☆2(序盤は☆4)。3-6と扱いはほぼ同じだが3-6より弱い。

(5ボタン)

5-3:☆5(序盤は☆4)。8マスは広いのでぜひ取りたい。ただ序盤は高い。

5-4;☆4(序盤は☆5)。序盤の強タイル。2-3、3-6の受けがあるのが高評価。

5-5:☆3。(序盤は☆4)。時間が重いのと、7-2がほぼ上位互換。

(6ボタン)

6-5:☆2。非効率。基本スルー。ただ最後の詰めには入れやすいので☆2。

(7ボタン)

7-1:☆4。(序盤は☆1)7x7作成にも詰めにも便利だが序盤回収は非推奨。

7-2:☆5。2収入ボタンで2時間はかなり優秀。平面積みだとさらに強力。

7-4:☆4。7-2には価値が劣るが受けやすさで優る。

7-6:☆1。取るとすれば序盤だが7ボタンが重いうえ8-6の下位互換。終盤にとってもリターンが乏しい地雷タイル。回収するならSPパッチと一緒に取る。

(8ボタン)

8-6:☆4。3収入ボタン6マスとそこそこ広いうえ意外と受けやすい。3収入ボタン付きのタイルとしては最強。

(10ボタン)

10-3:☆4。終盤でも隙間にねじ込みやすく直線空き地の妥協に使えるので便利。

10-4:☆2。収入ボタン目的での回収は非効率だが整地や角埋めには役立つ。

10-5:☆2。10-3や10-4に使い勝手で劣る。受けの形は残しやすい。